Classici giapponesi con furigana
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しょくま
食魔
岡本 かの子
Leggi 食魔 (しょくま) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 36.911 caratteri · 74 schermate
若者の鼈四郎は、こういう景致や物音に遠巻きされながら、それに煩わされず、逃れて一人うとうとする束の間を楽しいものに思い做した。腹に満ちた咀嚼物は陽のあたためを受けて滋味は油のように溶け骨、肉を潤し剰り今や身体の全面にまでにじみ出して来るのを艶やかに感ずる。金目がかかり、値打ちのある肉体になったように感ずる。心の底に押籠められながら焦々した怒ろしい想いはこの豊潤な肉体に対し、いよいよその豊潤を刺激して引立てる内部からの香辛料になったような気がする。その快さ甘くときめかす匂い、芍薬畑が庭のどこかにあるらしい。
古都の空は浅葱色に晴れ渡っている。和み合う睫の間にか、充ち足りた胸の中にか白雲の一浮きが軽く渡って行く。その一浮きは同時にうたた寝の夢の中にも通い、濡れ色の白鳥となって翼に乗せて過ぎる。はつ夏の哀愁。「与四郎さん、こんなとこで寝てなはる。用事あるんやわ、もう起きていなあ、」鼻の尖を摘まれる。美しい年増夫人のやわらかくしなやかな指。
鼈四郎はだんだん家へ帰らなくなった。貧寒な拓本職人の家で、女餓鬼の官女のような母を相手にみじめな暮しをするより、若い女のいる派手で賑かな会席を渡り歩るいてる方がその日その日を面白く糊塗できて気持よかった。