Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こうすいしんし

香水紳士

大阪 圭吉

Leggi 香水紳士 (こうすいしんし) di 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7752 caratteri · 16 schermate

Aozora Bunko

お母さんにたしなめられても、

「だって、いただきたくないんですもの。もし、おなかがすいたら、大船でサンドウィッチを買いますわ。あすこのサンドウィッチ、とてもおいしいんですもの」

「まア、あきれたおしゃまさんね。どこからそんなこと聞き噛ったの?」

「あーラいやだ。だって、去年の夏、鎌倉の帰りに、お母さんが買って下さったじゃないの‥‥」

そんなわけで、早々にお家を飛びだすと、いそいそとして東京駅へやって来たクルミさんである。

日曜日で、列車はわりにたて混んでいたが、それでも車室の一番隅っこに、まだ誰も腰掛けていない上等のボックスがみつかった。

一番隅っこであったことが、わけもなくクルミさんを喜ばした。

「ここなら、ガムを噛んだって、サンドウィッチを食べたって、恥かしくないわ」

こころゆくまで、一時間半の小旅行が楽しめるのだ。

まず、窓際へゆっくり席をとって、硝子窓を思いッきり押しあける。と、こころよい五月の微風が、戯れかかるように流れこんで来た。

やがて、ベルが鳴り、列車は動きだす。そして、クルミさんの楽しい小旅行がはじまったのだ。

ところが――

そうして、まだ十分もしないうちに、列車が品川の駅へとまると、クルミさんのボックスへ、一人の相客が割りこんで来た。