Classici giapponesi con furigana
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こうすいしんし
香水紳士
大阪 圭吉
Leggi 香水紳士 (こうすいしんし) di 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7752 caratteri · 16 schermate
そして、窓から外を見ているクルミさんにはものも云わず荒々しい調子で、硝子窓をしめてしまった。
クルミさんは、ハッとなって身を退いた。
紳士の不機嫌が、クルミさんの心を鞭打ったのだ。が、そればかりではない。もう一つ大きな理由があったのだ。クルミさんは、紳士の右手を、はじめて見たのである。
誰でも知っているように、汽車の窓をしめるには、必ず両手を使わなければならない。それで、今、立ちあがった紳士も、この時はじめて右手をポケットから出して、両手で窓をしめたのであるが、丁度その右手が、窓の外を見ているクルミさんの顔の前へ来てとまった。が、窓がしまると、素早く紳士はその手を引ッこめて、ポケットへ入れ、再び前の姿勢になって、新聞を読みはじめたのだ。
しかし、その短い間に、クルミさんは、紳士の右手を見てしまった。
その手は、中指が根元からなくて、四本指である。
「ああ、傷痍軍人の方か知ら?」
瞬間、クルミさんはそう思って、みるみる身内が熱くなった。
「もしそうだったなら、あたしはなんて愚かな少女だろう。そういう立派なお方と、同席したことを不愉快に思っていたなんて!」