Classici giapponesi con furigana
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こうちがえり
高知がえり
寺田 寅彦
Leggi 高知がえり (こうちがえり) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 3148 caratteri · 7 schermate
浪がないから竜王の下の岩に躍る白浪の壮観も見えぬ。釣船はそろそろ帆を張って帰り支度をしている。沖の礁を廻る時から右舷へ出て種崎の浜を見る。夏とはちがって人影も見えぬ和楽園の前に釣を垂れている中折帽の男がある。雑喉場の前に日本式の小さい帆前が一艘ついて、汀には四、五人ほど貝でも拾っている様子。伝馬に乗って櫂を動かしている女の腕に西日がさして白く見える。どうやら夏のようにも思われる。貴船社の前を通った時は胸が痛かった。玉島のあたりははらかた釣りが夥しいが、女子供が大半を占めている。種崎の渡しの方には、茶船の旗が二つ見えて、池川の雨戸は空しく締められてこれも悲しい。孕の山には紅葉が見えて美しい。碇を下ろして皆端艇へ移る。例のハイカラは浜行の茶船へのる。自分は蚕種検査の先生方の借り切り船へ御厄介になった。須崎のある人から稲荷新地の醜業婦へ手紙を託されたとか云って、それを出して見せびらかしている。得月楼の前へ船をつけ自転車を引上げる若者がある。楼上と門前とに女が立ってうなずいている。犬引も通る。これらが煩悩の犬だろう。松が端から車を雇う。下町は昨日の祭礼の名残で賑やかな追手筋を小さい花台をかいた子供連がねって行く。