Classici giapponesi con furigana
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げかしつ
高野聖
泉 鏡花
Leggi 高野聖 (げかしつ) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 51.264 caratteri · 104 schermate
三
「伯父さんおあぶのうございますよ」
半蔵門の方より来たりて、いまや堀端に曲がらんとするとき、一個の年紀少き美人はその同伴なる老人の蹣跚たる酔歩に向かいて注意せり。渠は編み物の手袋を嵌めたる左の手にぶら提灯を携えたり。片手は老人を導きつつ。
伯父さんと謂われたる老人は、ぐらつく足を蹈み占めながら、
「なに、だいじょうぶだ。あれんばかしの酒にたべ酔ってたまるものかい。ときにもう何時だろう」
夜は更けたり。天色沈々として風騒がず。見渡すお堀端の往来は、三宅坂にて一度尽き、さらに一帯の樹立ちと相連なる煉瓦屋にて東京のその局部を限れる、この小天地寂として、星のみひややかに冴え渡れり。美人は人ほしげに振り返りぬ。百歩を隔てて黒影あり、靴を鳴らしておもむろに来たる。
「あら、巡査さんが来ましたよ」
伯父なる人は顧みて角燈の影を認むるより、直ちに不快なる音調を帯び、
「巡査がどうした、おまえなんだか、うれしそうだな」
と女の顔を瞻れる、一眼盲いて片眼鋭し。女はギックリとしたる様なり。
「ひどく寂しゅうございますから、もう一時前でもございましょうか」
「うん、そんなものかもしれない、ちっとも腕車が見えんからな」