Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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まぞう

魔像

林 不忘

Leggi 魔像 (まぞう) di 林 不忘 (はやしふぼう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 131.494 caratteri · 260 schermate

Aozora Bunko

あッと言う間に、すらり抜いた刀を、ブランと片手にぶら提げて、喬之助は、あらぬ方を見詰めて立っている。その眼には纏りがなく、着物の前が割れて、だらしなく下着が見えているのだ。言うことばも唐突で、何だか辻褄が合わないよう――なので、大迫玄蕃は、いっそうゾッとして二、三歩、あとへ退った。

狂気? そうだ。この神尾喬之助は、発狂しているに相違ない。

それなら、尚のこと。

いやが上にも下に出て、とにかく、人が来るまでなだめて置くのが上分別と思ったから、大迫玄蕃も一生懸命だ。

「いやア、よく来た。よく来なすった。昔の友達を忘れずにナ、ありがたい」あんまりありがたくもないが、

「マ、そ、その、人斬庖丁という物騒なものを納めなされ。そして、そして、何なりと、ゆっくり話を承わろうではござらぬか」

喬之助は、春の野に蝶を追うような様子で、フラフラと泳ぐように、前へ出て来た。パラリ、結び目の解けた手拭の端を口にくわえて、やはり、右手にはだらりと抜刀を提げている。虚ろな表情だ。口走るように、言った。

「首をくれ! よウ、その首をくれエ!」

ぎょッ! とすると玄蕃、思わず自分の首筋へ手をやった。