Classici giapponesi con furigana
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さかなのじょぶん
魚の序文
林 芙美子
Leggi 魚の序文 (さかなのじょぶん) di 林 芙美子 (はやしふみこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.384 caratteri · 21 schermate
彼女がその着物をちぬ子の家から持って来てもはや十日あまりにもなるのだが、一心になって毎日こつこつ縫っている彼女に向って、何を僕が咎めだてする事が出来るだろう。
「でも、もうこれで出来上ったのだから、持って行こう……」
彼女は、出来上った着物を畳んで座蒲団の下に敷いた。
「出来上ったンなら早く持っておいで、友情のない奴の品物なンぞ見るのも不愉快だ」
僕は一々彼女に向ってああしては悪い、こうしては悪いなどと云う事に草臥れ始め、自分のキリキリした神経もこの頃では少しばかり持てあまし気味でいるのだ。
履歴書も四五十通以上は書いたろう、あらゆる友人を頼って迷惑な手紙も随分書いたが、頼んだ友人達自身が何等の職もなく弱っている者が多かった。
彼女は着物を風呂敷に包むと、悪戯ッ子らしく眼をクルクルさせて僕の両手を引っぱり、台所へ連れて行くのだ。「ねえ、私、ちぬ子さんにいいお土産を持って行こうと思うのよ」そう云って彼女が台所の流し場を指差したのを見ると、西洋種の紅い豆の花や、束の大きい矢車草がぞっぷりと水につけられていた。
「おお綺麗だなア……」
「綺麗でしょう……」
「どうしたンだい、こんなゼイタクな花束を?」