Classici giapponesi con furigana
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さかなのじょぶん
魚の序文
林 芙美子
Leggi 魚の序文 (さかなのじょぶん) di 林 芙美子 (はやしふみこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.384 caratteri · 21 schermate
灰色の墓原の向うにこの僕の心に合わせて、誰か口笛を吹いて通る者がある。
帽子の釘に一緒にぶらさげた電気に灯がはいると、彼女は風呂敷を米で針坊主のようにふくらまして帰って来た。
「五拾銭貰って来たのよ。ちぬ子さんたらあんまり上手じゃないわねえッて云うの」
「あいツ、お前の縫った着物を着たら体が腫れあがって来るだろうさ、――ところで、今日墓の中でいい言葉をみつけて来たよ」
「どんな言葉?」
「いいや、別にあらたまるほどじゃないが、明日、またどッかへ花を持って行くところはないかね。グラジオラスやチウリップがたくさんあったよ、その墓の主なら咎めだてはしないだろう――『浮世には思い出もあらず』と書いてあったのさ」
「浮世には思い出もあらず、変に気取った奴ね、私だったら『うらめしい』と書いてもらうわ」
「ええッ、うらめしいか、なるほどねえ」
こましゃくれた奴だ。彼女は米さえ買って来ると唱歌が上手になる。一坪の厨は活気を呈して鰯を焼く匂いが僕の生唾を誘った。
たった五十銭の収入で驚くべき生活のヒヤクだ。僕もあわただしく机へ向った。今は黄いろくなって古びたりと云えど、プウシュキンの訳に手を入れてみるべきだ。