Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 261.216 caratteri · 521 schermate
少し、どこかで涼んで行こうじゃありませんか」
と、厄除薬師の石段を上りかける。
「上へあがってみなせエ、寒いようだから」
同職と思って、源次はすっかり気をゆるめているらしい。だが腹の底はしまった男とみえて、飲屋で話しあっている間に眼八がチョイチョイかまを試みたが、いっこう、口を辷らせてこなかった。
で、かれは、少し業が煮えていた。
どこかで睨みの利くところを見せて泥を吐かせてしまおう胸算。足場ばかり見廻している。
山は医王山の幽翠を背負って、閑古鳥でも啼きそうにさびていた。
厄年の男女がふめば厄難をはらうという、四十二段、三十三段の石段を上ると、日和佐川のはけ口から、弧をえがいている磯の白浪、ひと目のうちだ。
明鏡のような夏の月が、荒海から天へ洗い上げられている。
うろこ雲の徐々とした歩みに、月光が変るにつれ、海もたえず明暗の変化を見せていた。その、冴えきった一瞬には、水天髣髴の境、紀の路の山が、ありやなしやに見えている。
「エエ、気味のいい風だ」
と汗をひそめて、眼八は境内の捨石へ腰をすえ、
「なるほど、ここはいい所だ」といった。
眺めのいい所という意味と、源次をひっぱたくにはいいお白洲だという二様の意味にとれる。