Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 261.216 caratteri · 521 schermate
と思うと。
ズンと、刀だけ、岩へ深く、斜めに立ってしまった。
肩越しに腕をつかまれ、お綱は一角の前へ投げられている。どっちも死身、組むなり火のような息を争って、秘帖を奪り返そうとする! 渡すまいとする! 組んではもつれ、伏せられては突っぱねる、一方は女、一方は傷負、天堂勇なりといえどもなにしろ前からの痛手がある。お綱は江戸女の勝気とはいえ、やはり女だけの力である、力量公平に減殺されているのでいずれともいえない、秘帖を中心に双鶏羽毛を飛ばすありさまだ。
* * *
めったにないことだ。
原士の長龍耳老人が出かけるなんて稀有なことだ。
第一、吉野川の上流平和な地域にそんな事件がかつてないせいもあったろうが、なにしろ、龍耳老人が出張ってくるなんてまことに珍らしい。
ごう――ッと空が鳴っていた。
夕方、真っ白に隠された剣山は、夜になって、すッかり霽れていた。
「秋が近いな」
空の銀河を仰いで、老人は白い髯の先をかじっている。
「山へ入ると秋の音が聞こえるよ」
誰も返辞のしてがない。
老人の前には松明が二本、うしろには人影が四、五、黙々とついて歩いてくる。