Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 261.216 caratteri · 521 schermate
あれをつかんで遺志をとげないうちは、命のある限り、闘わなければならない。
「お綱」
やがて弦之丞は、しっかりした声音で、かの女を見る目に愛熱の火をこめた。涙ぐましいくらいな情思をかくありありと彼が見せたことはなかった。
「お綱! お前はどんな危地に迫ろうと、決して、この弦之丞より先に死んではならぬ。拙者には、何かしら霊感というような自信がある。きっと、あの秘帖は奪り返してみせる。サ、今日はどこかへ姿を隠そう、この傷の血さえ少し止まれば……」
と、立ちかけたが、お綱がその膝に顔をうツ伏せて、泣いているのか、離れる様子がないので、また言いつづけた。
「よいか、お綱、拙者が秘帖をそちの手に返してやったら、お前はあれを持って江戸へ帰れ! そこには、お千絵殿の幸福やら、甲賀家の栄やら、お前の亡き母の霊もまた、みんな、微笑をもって待っていよう。必ず、短気を出して、世阿弥殿の託にそむいてはならぬぞ。わしとて、そちが阿波をのがれる姿を見届けるまで、必ずみずから死を招くことはいたさぬ」
この上にもお綱の意志を強めようとほとばしる言葉のうちに、死を覚悟している弦之丞の心がほのめいた。