Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 261.216 caratteri · 521 schermate
「…………」
「返辞はどうなさいました。おっしゃって下さい、弦之丞様、承知したというひと言! それを聞いて、わたしはもう……行かなければならない所があるのです。そこへ、迎えが来ている体でございますから」
「や! ……」とふりかえる弦之丞。
鴻山もお千絵も、いつぞやの人相書を思いあわせて、初めて、救いがたいお綱の危機が、支度をしてのぞんでいる態に気がついた。
弦之丞は何ともいえぬすくみを、自身におぼえた。そして、棒立ちになっている万吉とともに、暗然とした顔を見あわせてしまったが、やがて、衝きあげる感情にたまらなくなって、ふたりとも声を洩らさず、背中合せに腕を曲げて、熱涙のたばしる瞼をおさえていた。
――待ちくたびれた様子の捕手は、果てしがないと見てか、急にいらいらとした空気をゆるがせて、
「まだか!」
と、むこうで呶鳴りだした。
エヘン! と職分、ただそれにだけ忠実な中西弥惣兵衛は、再三咳ばらいをして、かれの耳へ冬の風より辛く、刻限の約束をうながした。
「おお……」と万吉。
あれ程な男も、今は、目睫にせまった当惑と、足もとの情涙に、意気地もなくうろたえて、手を合して、拝まないばかりに。