Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 261.216 caratteri · 521 schermate
「――お綱、お綱」
と無意識に止めたが、それにさえ、耳をおさえて逃げるように、かの女は、疲れきった姿の細い影法師を、ふらふらと、青い月の色へよろめかせて行った。
大地いッぱいに光る草露は、みんな、泣かぬ自分の涙かとも思えて、
「ああ、ぜひがねえ」
今は! ……と天満の万吉。
惑いがちな私情に鞭打って、そのうしろから走りだした。ガッキと口にくわえた銀みがきの十手は、心を鬼にもつうわべの牙。
飛び寄ったが万吉、うしろから廻した手はいたわるようにそっと抱き止めて、
「お綱、御用……」
と、力のない涙の捕縄。
やわらかに掛けて廻した。
かの女の指は帯のうしろで、自分から捕縄をつかんでいた。そして、かれと自分との奇しき因縁を回顧するように、
「……万吉さん」
と、感慨を目にこめてふりかえった。
すぐに、中西弥惣兵衛は組子をつれてバラバラと駆けてくる。
捕渡しの法則どおり一札を渡されたが、万吉には見る気力もなく、縄尻が先方の手に移るとともに、お綱はもうなんら同情もない人相書一枚の女スリとして扱われた。
「歩けッ!」
と、月にひとすじのむごたらしい縄が、黒い影と影とをつないで、万吉も鴻山もお千絵も思わず面をそむけさせられた。