Classici giapponesi con furigana
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きりん
麒麟
谷崎 潤一郎
Leggi 麒麟 (きりん) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9040 caratteri · 18 schermate
力を以て諸国を屈服する覇者の道と、仁を以て天下を懐ける王者の道との区別を知らせた。
「公がまことに王者の徳を慕うならば、何よりも先ず私の慾に打ち克ち給え。」
これが聖人の誡であった。
其の日から霊公の心を左右するものは、夫人の言葉でなくって聖人の言葉であった。朝には廟堂に参して正しい政の道を孔子に尋ね、夕には霊台に臨んで天文四時の運行を、孔子に学び、夫人の閨を訪れる夜とてはなかった。錦を織る織室の梭の音は、六藝を学ぶ官人の弓弦の音、蹄の響、篳篥の声に変った。一日、公は朝早く独り霊台に上って、国中を眺めると、野山には美しい小鳥が囀り、民家には麗しい花が開き、百姓は畑に出て公の徳を讃え歌いながら、耕作にいそしんで居るのを見た。公の眼からは、熱い感激の涙が流れた。
「あなたは、何を其のように泣いていらっしゃる。」
其の時、ふと、こう云う声が聞えて、魂をそゝるような甘い香が、公の鼻を嬲った。其れは南子夫人が口中に含む鶏舌香と、常に衣に振り懸けて居る西域の香料、薔薇水の匂であった。久しく忘れて居た美婦人の体から放つ香気の魔力は、無残にも玉のような公の心に、鋭い爪を打ち込もうとした。