Classici giapponesi con furigana
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こうとう
黄灯
田中 貢太郎
Leggi 黄灯 (こうとう) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.262 caratteri · 21 schermate
女房が帰って来たなら、内へ入らないうちに起きなくてはいけないと思った。彼は被っていた蒲団をすこし透かして、下駄の音が聞えはしないかと耳を澄ました。
じめじめとした雨の音が聞えるばかりであった。彼はまた二三日前に人から聞いた鬼火のことを思いだした。青い蛍火の団ったような火の団りが電柱にぶっつかって、粉粉になった容が眼の前に浮んで来た。
(ありゃ、桐島の書生の鬼火だ、乗手の判らない自動車に轢かれて死んだと云うことになってるが、何か込み入った理があるかも判らない、それでなくて、鬼火になって出て来るものかね)
桐島邸の左隣になった長屋で、何時か聞いた話が主翁の耳に蘇って来た。
(お邸の若様と云っても、恥かしくないような、好い男の書生さんだった、何か理があるだろうよ)
坂の下の散髪屋の主翁の云った詞も浮んで来る。
(あんな大きなお邸だ、俺達には判らない、いろんなことがあるだろう)
主翁は活動で見る上流社会のお家騒動のようなことを頭に浮べていた。と、がたがたと気忙しそうに障子を開ける音がした。主翁はびっくりして蒲団をはね除けて起きあがろうとした。
「寒い、寒い、えらい目にあったよ」