Classici giapponesi con furigana
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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
Leggi 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) di 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 296.741 caratteri · 584 schermate
「では、その人物は何を見たのでしょうな。儂はとんとその詩句を知らんのですよ」レヴェズ氏が暗い怯々した調子で問い掛けると、法水は狡そうに微笑んで、
「ところがレヴェズさん、心も黒く夜も黒し、薬も利きて手も冴えたり――なんです。そして、その場所が、折もよし人も無ければ――でした」
と云い出したのは、一見見え透いた鬼面のようでもあり、また、故意に裏面に潜んでいる棘のような計謀を、露わに曝け出したような気がしたけれども、しかし彼の巧妙な朗誦法は、妙に筋肉が硬ばり、血が凍りつくような不気味な空気を作ってしまった。クリヴォフ夫人は、それまで胸飾りのテュードル薔薇(六弁の薔薇)を弄っていた手を卓上に合わせて、法水に挑み掛るような凝視を送りはじめた。が、その間のなんとなく一抹の危機を孕んでいるような沈黙は、戸外で荒れ狂う吹雪の唸りを明瞭と聴かせて、いっそう凄愴なものにしてしまった。法水はようやく口を開いた。
「しかし、原文には、また真昼を野の火花が散らされるばかりに、日の燃ゆるとき――とあるのですが、そこは不思議なことに、真昼や明りの中では見えず、夜も、闇でなくては見ることの出来ぬ世界なのです」