Classici giapponesi con furigana
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くろゆり
黒百合
泉 鏡花
Leggi 黒百合 (くろゆり) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 78.148 caratteri · 154 schermate
「恐れるな。小天狗め、」とさも悔しげに口の内に呟いて、洋杖をちょいとついて、小刻に二ツ三ツ地の上をつついたが、懶げに帽の前を俯向けて、射る日を遮り、淋しそうに、一人で歩き出した。
「ジャム、」
真先に駈けて入った猟犬をまず見着けたのは、当館の姫様で勇美子という。襟は藤色で、白地にお納戸で薩摩縞の単衣、目のぱッちりと大きい、色のくッきりした、油気の無い、さらさらした癖の無い髪を背へ下げて、蝦茶のリボン飾、簪は挿さず、花畠の日向に出ている。
二
この花畠は――門を入ると一面の芝生、植込のない押開いた突当が玄関、その左の方が西洋造で、右の方が廻廊下で、そこが前栽になっている。一体昔の大名の別邸を取払った幾分の造作が残ったのに、件の洋風の室数を建て増したもので、桃色の窓懸を半ば絞った玄関傍の応接所から、金々として綺羅びやかな飾附の、呼鈴、巻莨入、灰皿、額縁などが洩れて見える――あたかもその前にわざと鄙めいた誂で。
日車は莟を持っていまだ咲かず、牡丹は既に散果てたが、姫芥子の真紅の花は、ちらちらと咲いて、姫がものを言う唇のように、芝生から畠を劃って一面に咲いていた三色菫の、紫と、白と、紅が、勇美子のその衣紋と、その衣との姿に似て綺麗である。