Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ねずみとはとむぎ

鼠と鳩麦

宮本 百合子

Leggi 鼠と鳩麦 (ねずみとはとむぎ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 2253 caratteri · 5 schermate

Aozora Bunko

変でしょう? 三つもこんな魚の目みたいなものが拇指にばっかり出来るなんて……」

「拇指に出来ると、親に死に別れるって云うのよ……当ってるのかしら」

おのずと低い真面目なような声になって友達が其れを云ったのは、私が数年前に母を失い、それから足かけ三年目の一月末に、父を喪っていたからであった。二つの説明はそれでつくとして、あともう一つの分はどういうことになるのだろう。そう思って、友達が当ってるのかしら、と疑わしく云う気持が私にわかるのである。私は拇指の腹を眺めて、やがて其の上をこするようにしながら、

「もしそうなら、誰でも一生には四つ出るわけね」

と笑った。

「だってさ、自分の親たちと、つれ合いの人の親たちと……」

そんなことを喋ったのは去年の冬のことであった。その後私は盲腸炎を患ったが、切開することが出来なかったからいつ迄も工合わるくて、下駄が右の腹に響いて歩いてもいやな気分がつづいた。その話をきいて、又別の年長の友達が私に一つの漢方薬を教えてくれた。それをのんでいて、いくらかずつおなかのいやな気色を忘れた。

或る時、湯上りに爪を剪っていた。左の指をずっと剪って、右の方になったとき、思い出すともなく思い出して拇指の裏を見たら、魚のめのようなものは二つ、いつの間にかすっかり消えてしまっている。