Classici giapponesi con furigana
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あのかお
あの顔
林 不忘
Leggi あの顔 (あのかお) di 林 不忘 (はやしふぼう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.813 caratteri · 30 schermate
曲りくねった小径が、導くように遠くへ走っていた。それが、ゆるい勾配をもって、また一つ先の小山のほうへ、渡り板をさしかけたように、坂になっているのだった。ところどころに、朽木が横倒しに置かれて、足がかりの段になっていた。ぼんやりと、だが、しかし息を切らして、お久美はそこを登って行った。人かげに驚いて、草むらから鳥が立った。潮風に矯められて一方へだけ枝を伸ばした磯松の列が、かの女の視野へはいって来た。つぎに、かの女の見たものは、荒れ果てた墓地をまえに無残につぶれている古寺の屋根と、そこと崖の縁とのあいだの、以前庫裡のあったらしい場所に、なきがらのように積み上げてある材木の山だった。はるか眼の下に、白い波の線が、岩を噛んでいるのが見えた。
石一つ、草いっぽん、夢のけしきと同じだった。夢にみる場処は、現実に、ここなのだった。おおいなる驚異と、とうとう来るところへきたという、不可思議な安堵とが、お久美のなかに渦まいた。松原の露が、素足にかかった。頭上に鳴きかわす烏の声を聞きながら、かの女は夕陽に片頬を染めて、雑草のなかにしゃがんでいた。垣根のあとの捨て石に、青苔が、濡れて、光っていた。