Classici giapponesi con furigana
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あるおとこのだらく
ある男の堕落
伊藤 野枝
Leggi ある男の堕落 (あるおとこのだらく) di 伊藤 野枝 (いとうのえ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.585 caratteri · 27 schermate
五
五
ちょうどその頃、Yはその借家のゴタゴタから問題を起こして拘引されました。それは大正八年の夏のことで、労働運動の盛んに起こってきた年の夏で、警視庁は躍起となって、この機運に乗じて運動を起こそうとする社会主義者の検挙に腐心したのです。そしてYと同時に、Oも次から次へ、様々な罪名で取調べを受けている時でした。Yは、すぐに起訴されて収監されました。彼のやや外れかかった生活状態に、多少の憂慮を抱いていた同志は、みんないい機会が来たことをよろこびました。
収監される前に、私が警視庁で会った時、Yは非常な元気でした。しかし、私は収監されてからの彼のことを考えると可愛そうでした。彼は自分の名前をろくに書けないのです。彼はその以前に、私に、自分が姓名もろくに書けないので馬鹿にされる、ということを話して、原籍と姓名だけを書けるようになりたいから、チャンとそのお手本を書いてくれ、と頼んだことがあります。けれども、彼のそのしおらしい頼みで書いた私の手本が、恐らくはその日一日も彼の懐には落ちつかなかったろうということを、私はよく知っています。彼は理屈を覚えるのには熱心で、というよりはむしろ執拗でしたけれど、自分で本を読めるようになろうというような努力はまるでしませんでした。