Classici giapponesi con furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Leggi おせん di 邦枝 完二 (くにえだかんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.074 caratteri · 148 schermate
千吉がふところから取出したのは、巻紙と矢立であった。
おせんは、あわてて手を引ッ込めた。
「堪忍しておくんなさい」
「何もあやまるこたァありゃァしねえ。暗くッて書けねえというンなら、仕方がねえ。行燈をつけてやる」
「もし。――」
今度はおせんが、千吉の手をおさえた。
「何をするんだ」
「あたしゃ、どうでもいやでござんす」
「そんならこれ程までに、頭をさげて頼んでもか」
「外のこととは訳が違い、あたしゃ数あるお客のうちでも、いの一番に嫌いなお人、たとえ嘘でも冗談でも、気の済まないことはいやでござんす」
「おせん。おめえ、兄貴を見殺しにするつもりか」
「何んとえ」
「おめえがいやだとかぶりを振りゃァ、おいらは人から預かった、大事な金を落としたかどで、いやでも明日は棒縛りだ。――そいつもよかろう。おめえはかげで笑っていねえ」
「兄さん」
「もう何んにも頼まねえ。これから帰って縛られようよ」
千吉は、わざとやけに立上って窓辺へつかつかと歩み寄った。
突然隣座敷から、お岸のすすり泣く声が、障子越しに聞えて来た。
文
一
「若旦那、もし、油町の若旦那」
「おお、お前は千吉つぁん」