Classici giapponesi con furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Leggi おせん di 邦枝 完二 (くにえだかんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.074 caratteri · 148 schermate
七
二代目瀬川菊之丞の死が報ぜられたのは、その日の暮れ方近くだった。江戸の民衆は、去年の吉原の大火よりも、更に大きな失望の淵に沈んだが、中にも手中の珠を奪われたような、悲しみのどん底に落ち込んだのは、菊之丞でなければ夜も日もあけない各大名や旗本屋敷の女中達だった。
殊に、この知らせを受けて、天地が覆えった程の驚愕を覚えたのは、南町奉行本多信濃守の妹お蓮であろう。折から夕餉の膳に対おうとしていたお蓮は、突然手にした箸を取落すと、そのまま狂気したように、ふらふらッと立上って、跣足のまま庭先へと駆け降りて行った。
二三人の侍女が、直ぐさまその後を追った。
「もし、お嬢様。お危のうござります」
「何をするのじゃ。放しや」
「どちらへおいで遊ばします」
「知れたことじゃ。これから直ぐに、浜村屋の許へまいる」
「これはまあ、滅相なことを仰しゃいます」
「何が滅相なことじゃ、わらわがまいって、浜村屋の病気を癒して取らせるのじゃ。――邪間だてせずと、そこ退きゃ」
「なりませぬ」
「ええもう、退きゃというに、退かぬか」
手荒く突き退けられた一人の侍女は、転びながらも、お蓮の裾を確と押えた。