Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
おせん
おせん
邦枝 完二
Leggi おせん di 邦枝 完二 (くにえだかんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.074 caratteri · 148 schermate
――ふふふ。もうひと摘み、新しいこいつをいれ、肚一杯にかぐとしようか」
春重は傍らに置いた紅の糠袋を、如何にも大切そうに取上げると、おもむろに口紐を解いて、十ばかりの爪を掌にあけたが、そのまま湯のたぎる薬罐の中へ、一つ一つ丁寧につまみ込んだ。
「ふふふ、こいつァいい匂だなァ。堪らねえ匂だ。――笠森の茶屋で、おせんを見てよだれを垂らしての野呂間達に、猪口半分でいいから、この湯を飲ましてやりてえ気がする。――」
どこぞの秋刀魚を狙った泥棒猫が、あやまって庇から路地へ落ちたのであろう。突然雨戸を倒したような大きな音が窓下に聞えたが、それでも薬罐の中に埋められた春重の長い顔はただその眉が阿波人形のように、大きく動いただけで、決して横には向けられなかった。
二
「おたき」
「え」
「隣じゃまた、いつもの病が始まったらしいぜ。何しろあの匂じゃ、臭くッてたまらねえな」
「ほんとうに、何んて因果な人なんだろうね。顔を見りゃ、十人なみの男前だし絵も上手だって話だけど、してることは、まるッきり並の人間と変ってるんだからね」
「おめえ。ちょいと隣へ行って来ねえ」
「何しにさ」