Classici giapponesi con furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Leggi おせん di 邦枝 完二 (くにえだかんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.074 caratteri · 148 schermate
「へえってもいいかい」
「帰るんなら帰ンねえ」
「いやにおどかすの」
「振られた朝帰りなんぞに寄られちゃ、かなわねえ」
「ふふふ。振られてなんざ来ねえよ。それが証拠にゃ、いい土産を持って来た」
「土産なんざいらねえから、そこを締めたら、もとの通り、ちゃんと心張棒をかけといてくんねえ」
「重さん、おめえまだ寝るつもりかい」
「いいから、おいらのいった通りにしてくんねえよ」
松五郎が不承無承に、雨戸の心張棒をかうと、九尺二間の家の中は再び元通りの夜の世界に変って行った。
「上ンねえ」
が、松五郎は、次第に鼻を衝いてくる異様な匂に、そのままそこへ佇んでしまった。
四
行燈はほのかにともっていたものの、日向から這入って来たばかりの松五郎の眼には、家の中は真ッ暗闇であった。
「松つぁん、何んで上らねえんだ」
「暗くって、足もとが見えやしねえ」
「不自由な眼だの。そんなこっちゃ、面白い思いは出来ねえぜ」
「重さん、おめえ、ずっと起きて何をしてなすった」
「ふふふ。こっちへ上りゃァ、直ぐに判るこッた。――まァこの行燈の傍へ来て見ねえ」
漸く眼に慣れて来たのであろう。行燈の輪が次第に色を濃くするにつれて、狭いあたりの有様は、おのずから松五郎の前にはっきり浮き出した。