Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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おせん

おせん

邦枝 完二

Leggi おせん di 邦枝 完二 (くにえだかんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.074 caratteri · 148 schermate

Aozora Bunko

その画室の中ほどに、煙草盆をはさんで、春信とおせんとが対座していた。おせんの初な心は、春信の言葉にためらいを見せているのであろう。うつ向いた眼許には、ほのかな紅を差して、鬢の毛が二筋三筋、夢見るように頬に乱れかかっていた。

「どうだの、これは別に、おいらが堺屋から頼まれた訳ではないが、何んといっても中村松江なら、当時押しも押されもしない、立派な太夫。その堺屋が秋の木挽町で、お前のことを重助さんに書きおろさせて、舞台に上せようというのだから、まず願ってもないもっけの幸い。いやの応のということはなかろうじゃないか」

「はい、そりゃァもう、あたしに取っては勿体ないくらいの御贔屓、いや応いったら、眼がつぶれるかも知れませぬが。……」

「それなら何んでの」

「お師匠さん、堪忍しておくんなさい。あたしゃ知らない役者衆と、差しで会うのはいやでござんす」

「はッはッは、何かと思ったら、いつもの馬鹿気たはにかみからか。ここへ堺屋を招んだのは、何もお前と差しで会わせようの、二人で話をさせようのと、そんな訳合じァありゃしない。松江は日頃、おいらの絵が大好きとかで、板おろしをしたのはもとより、版下までを集めている程の好き者仲間、それがゆうべ、芝居の帰りにひょっこり寄って、この次の狂言には、是非とも笠森おせんちゃんを、芝居に仕組んで出し