Classici giapponesi con furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Leggi おせん di 邦枝 完二 (くにえだかんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.074 caratteri · 148 schermate
……」
「いや、気に病むほどのことでもなかろうが、何せ若い女の急病での。ちっとばかり、朝から世間が暗くなったような気がするのさ」
「へえ」
春信の眼は、松江を反れて、地に曳く萩の葉に移っていた。
雨
一
「おい坊主、火鉢の火が消えちゃってるぜ。ぼんやりしてえちゃ困るじゃねえか」
浜町の細川邸の裏門前を、右へ折れて一町あまり、角に紺屋の干し場を見て、伊勢喜と書いた質屋の横について曲がった三軒目、おもてに一本柳が長い枝を垂れたのが目印の、人形師亀岡由斎のささやかな住居。
まだ四十を越していくつにもならないというのが、一見五十四五に見える。髷も白髪もおかまいなし、床屋の鴨居は、もう二月も潜ったことがない程の、垢にまみれたうす汚なさ。名人とか上手とか評判されているだけに、坊主と呼ぶ十七八の弟子の外は、猫の子一匹もいない、たった二人の暮しであった。
「おめえ、いってえ弟子に来てから、何年経つと思っているんだ」
「へえ」
「へえじゃねえぜ。人形師に取って、胡粉の仕事がどんなもんだぐれえ、もうてえげえ判っても、罰は当るめえ。この雨だ。愚図々々してえりゃ、湿気を呼んで、みんなねこンなっちまうじゃねえか。