Classici giapponesi con furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Leggi おせん di 邦枝 完二 (くにえだかんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.074 caratteri · 148 schermate
徳太郎は、偸むように顔を挙げた。
「手前でございます。市松の親父でございます」
「えッ」
「通りがかりの御挨拶で、何んとも恐れいりますが、どうやら、市松の野郎が、飛んだ粗相をいたしました様子。早速連れて帰りまして、性根の坐るまで、責め折檻をいたします。どうかこのまま。手前にお渡し下さいまし」
「おッとッとッと。父つぁん、そいつァいけねえ。おいらが悪いようにしねえから、おめえはそっちに引ッ込んでるがいい」
松五郎が親爺を制している隙に、徳太郎の姿は、いつか人込みの中へ消えていた。
七
「政吉、辰蔵、亀八、分太、梅吉、幸兵衛。――」
殆んどひといきに、二三日前に奉公に来た八歳の政吉から、番頭の幸兵衛まで、やけ半分に呼びながら、中の口からあたふたと駆け込んで来た徳太郎は、髷の刷毛先に届く、背中一杯の汚泥も忘れたように、廊下の暖簾口で地駄ン駄踏んで、おのが合羽をむしり取っていた。
「へい、これは若旦那、お早いお帰りでございます」
番頭の幸兵衛は、帳付の筆を投げ出して、あわてて暖簾口へ顔を出したが、ひと目徳太郎の姿を見るとてっきり、途中で喧嘩でもして来たものと、思い込んでしまったのであろう。