Classici giapponesi con furigana
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おりつとこらと
お律と子等と
Leggi お律と子等と (おりつとこらと) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 25.195 caratteri · 51 schermate
洋一は顔を汗ばませながら、まだ冗談のような調子で話し続けた。
「それから誰か病気になっても、急には帰って来られないし、――」
「そんな事は当り前だ。」
「じゃお母さんでも死んだら、どうする?」
歩道の端を歩いていた兄は、彼の言葉に答える前に、手を伸ばして柳の葉をむしった。
「僕はお母さんが死んでも悲しくない。」
「嘘つき。」
洋一は少し昂奮して云った。
「悲しくなかったら、どうかしていらあ。」
「嘘じゃない。」
兄の声には意外なくらい、感情の罩った調子があった。
「お前はいつでも小説なんぞ読んでいるじゃないか? それなら、僕のような人間のある事も、すぐに理解出来そうなもんだ。――可笑しな奴だな。」
洋一は内心ぎょっとした。と同時にあの眼つきが、――母を撲とうとした兄の眼つきが、はっきり記憶に浮ぶのを感じた。が、そっと兄の容子を見ると、兄は遠くへ眼をやりながら、何事もないように歩いていた。――
そんな事を考えると、兄がすぐに帰って来るかどうか、いよいよ怪しい心もちがする。殊に試験でも始まっていれば、二日や三日遅れる事は、何とも思っていないかも知れない。遅れてもとにかく帰って来れば好いが、――彼の考がそこまで来た時、誰かの梯子を上って来る音が、みしりみしり耳へはいり出した。