Classici giapponesi con furigana
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たきび
たき火
国木田 独歩
Leggi たき火 (たきび) di 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 3674 caratteri · 8 schermate
その手は震い、その膝はわななきたり。げに寒き夜かな、いう歯の根も合わぬがごとし。炎は赤くその顔を照らしぬ。皺の深さよ。眼いたく凹み、その光は濁りて鈍し。
頭髪も髯も胡麻白にて塵にまみれ、鼻の先のみ赤く、頬は土色せり。哀れいずくの誰ぞや、指してゆくさきはいずくぞ、行衛定めぬ旅なるかも。
げに寒き夜かな。独りごちし時、総身を心ありげに震いぬ。かくて温まりし掌もて心地よげに顔を摩りたり。いたく古びてところどころ古綿の現われし衣の、火に近き裾のあたりより湯気を放つは、朝の雨に霑いて、なお乾すことだに得ざりしなるべし。
あな心地よき火や。いいつつ投げやりし杖を拾いて、これを力に片足を揚げ火の上にかざしぬ。脚絆も足袋も、紺の色あせ、のみならず血色なき小指現われぬ。一声高く竹の裂るる音して、勢いよく燃え上がりし炎は足を焦がさんとす、されど翁は足を引かざりき。
げに心地よき火や、たが燃やしつる火ぞ、かたじけなし。いいさして足を替えつ。十とせの昔、楽しき炉見捨てぬるよりこのかた、いまだこのようなるうれしき火に遇わざりき。いいつつ火の奥を見つむる目なざしは遠きものを眺むるごとし。