Classici giapponesi con furigana
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『てっぽうさへいじ』ついでにもひとつ
たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集【底本画像有】
佐藤 春夫
Leggi たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集【底本画像有】 (『てっぽうさへいじ』ついでにもひとつ) di 佐藤 春夫 (さとうはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 23.182 caratteri · 48 schermate
それだからもう一週間ほど待たなければならないというのです。わたしはもうよほど怪しいものだと思ったからいいました。
「君、もし質にでも入れてあるならそういいたまえ。いくらでもあるまい。精々十五円も借しはしないだろう。金なら何でもないよ。あれは君、僕にだけ大切なものなんだからね」
「わかってます。大丈夫、質になど入れません。だれがS先生の本やと知ってそんなことするものですか。あとがおそろしいやありませんか」
同じような問答が何でも七八へんつづいたのです。いつも大同小異で、申しわけはだんだん細かくなるくせに、だんだん嘘らしくなって来たのです。わたしはもう本は二度と手もとには返らないと、ぼつぼつ覚悟をしていましたが、ただ意地になって、どうにかしてこの男に本当の話をさせたくなりました。そこでわたしはわざとくどく、しつっこくいいました。
「ね、君。あの本はほんとうにどうしたのだろう。僕は外のものならもうあきらめるが、あれだけはどうしてもあきらめ兼ねるのだ。それに君は決してあれをなくしたとはいわない。一たい僕がどうすればいいのだ。僕は本を失ったばかりじゃない。今では、本やなんかもうどうでもいい。