Classici giapponesi con furigana
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『てっぽうさへいじ』ついでにもひとつ
たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集【底本画像有】
佐藤 春夫
Leggi たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集【底本画像有】 (『てっぽうさへいじ』ついでにもひとつ) di 佐藤 春夫 (さとうはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 23.182 caratteri · 48 schermate
自分の心の底に根を張った昔ながらの荷風先生は今もまだわたくしの心に生きていたことを知った。そこでその夢を語る痴人になろうと思う。
夢は多分、この原稿を書かなければならないが、書くべき何事も無いのを思い煩った明け方の残夢でもあったらしい。
夢のなかでわたくしは荷風先生の死を、はじめて聞いた。わたくしは荷風先生の亡くなった家を見て置きたいと思い立って、直ぐ家を飛び出した。わたくしは先生の亡くなった家というのを当時まだ見ていなかったからである(この事は事実である)。
夢のなかの荷風先生臨終の家というのは何処だかわからないが、ちょっとした丘をのぼったところにあった。屋後に出ると月の下には家々が遠くつづいて見えた。後に思えば、あの眼下の町の様子はどうも三田山下の一角稲荷山であったらしい。稲荷山というのは三田の塾の奥で演説館のあるところで、わたくしは前年の秋二度ほどここへ行って、往年の塾の学生時代を思い出していた。
丘の上の家はいかにも主の亡くなった人のように閉め切っていた。それで裏手にまわって見ると、庭は黄色くもみじした雑木の林でその根方のスロープ一面にうす赤い色の尾花が風になびいている。