Classici giapponesi con furigana
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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
Leggi 『たぬき汁』以後 (あわもりものがたり) di 佐藤 垢石 (さとうこうせき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 118.470 caratteri · 244 schermate
緑の黒髪が、水際の小波にゆらゆら揺れる。
「焦ってはいかんな、あははは」
老猿は、高く笑った。
「でも――」
岩魚の精は、羞しそうな姿態をつくったのである。
「気を揉んだところで、時節がめぐってこなければ駄目じゃちうのは、お前さんも承知じゃろうがな」
「さ、それはそうですけれど――」
「あれはどこへもいけない人間じゃ、必ずお前さんの懐のものになるのは分かっているじゃろう」
老猿は、慈心に富んだ表情で巌の上から岩魚を見下ろしているのである。魚精は痩せた顔に澄んだ眼をあげ、老猿を仰いだ。
「石坂の家は先祖代々、息子が嫁を迎え、その嫁が一人の子供を生まんうちは、わしらのようなものの精が、どんな妖気を弄んだところで、あの息子を拐わかすことはできない。つまり石坂家の持っている天命を、われわれが左右しようといったとてそれは無理じゃ。まあ、落ちついて時節のくるのを待つがよい。その時節は、遠いことではあるまいとわしは思うね」
「ですが、わたしの乙女心をお察しください」
「乙女心か、あっははは――ところでね、賢彌君の曾祖父さんが、渋峠の西に当たる横手山の渓谷の岩窟に、野守の精ともう百年近くも共に棲んでいるのは、お前さんも知っている筈じゃね。