Classici giapponesi con furigana
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つばくろ
つばくろ
山本 周五郎
Leggi つばくろ di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 21.987 caratteri · 44 schermate
三之助は江戸へはゆかなかった。ゆくとみせて城下にひそんでいた。二十七歳まで耐え忍ぶ生活をして来た彼は、そのとき初めて怒ったのである。その怒りがそのままおいちへの思慕に変った。彼はおいちに会って、自分の不幸を訴たえたかった。おいちならわかって呉れるだろう、そしてあのころのように温たかく慰さめて、今後の相談相手にもなって呉れるだろう。……こう思ってひそかに機会を待ち、ようやくその日にめぐりあえたという。……彼の話しをおいちは泣きながら聞いた、そしてやはり江戸へゆくようにとすすめたのである。
――このままではゆけない、もういちど会って下さい。三之助はそうせがんだ、おいちは拒むことができなかった。日を定めてまた会い、そしてまた次の日を約束させられた。
――私に愛情をみせて呉れたのは貴女ひとりだ、私に持って来て呉れたあの菓子が、どういう銭で買われたものか私はよく知っていた、私がどんなに嬉しかったか貴女にわかるだろうか、……持って来て呉れる菓子よりも、そうして呉れる貴女の気持が、私にとってどんなに嬉しかったか。
――このひろい世の中に、私には父も母もない、兄弟も友達もない、私には貴女だけだ、貴女は私のたった一人の人だ。