Classici giapponesi con furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Leggi つゆのあとさき di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.725 caratteri · 148 schermate
君江は裏梯子の下で女中から様子をきき、今はどうする事も出来ないと覚悟をきめ、いきなり座敷の襖をあけると共に、
「矢さん。あなた。あんまりだわよ。」と鋭い声で叱りつけた。
矢田は今方女中の返事に驚かされた後、またしても意外な君江の様子に、何とも言わず、目ばかりぱちぱちさせている。
「わたし、もう帰ろうかと思ったのよ。」と君江はきちんと坐って俯向いた。
「一体どうしたというんだ。」と矢田は始めて心づいたらしく帽子を取り、「何だか、さっぱり訳がわからない。」
君江は俯向いたまま黙って膝の上にハンケチを弄んでいる。女中が上り花を運んで来て、
「ほんとにお待ちになっていらしったんですよ。お銚子をおつけ致しましょうか。」
「もう、おそう御在ますから。」と君江は妙に声を沈ませて、「こんなにおそくまで。ほんとに済みません。」
「おそいのは、もう馴れております。それでは。どうぞ。」と女中は矢田の帽子と夏外套とを持って立ちかけるので、矢田はとやかく言うひまもなく、案内されるがまま、先刻舞踊家のいた座敷とも知らず、黙って裏二階の四畳半に入った。
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