Classici giapponesi con furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Leggi つゆのあとさき di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.725 caratteri · 148 schermate
中の一人はドンフワンの君江である。君江の方でも村岡の顔を見て、アラとかオヤとか言ったらしかったが、その声はまだ吹きやまぬ烈風に吹き去られて聞えなかった。村岡は咄嗟の間に、先刻丸の内を歩きながら清岡が言った事を思出し、何とも知れぬ恐怖を感じて、首と手を振って早く行けと知らせた。いつになく乱酔した清岡が、人通のないこの裏通の角で突然君江の姿を見たら、何をしだすか知れない。新聞紙を賑すような騒ぎを引起しては大変だと心配したのである。
君江は村岡の心を察したのか、どうか分らぬが、そのまま通り過ぎて、三人連で向側の蕎麦屋へ這入りかけた時、丁度長小便をし終った清岡はひょろひょろと歩み出で、向を眺めながら、「どこの女給だ。おれが行っておごってやろう。」
村岡は驚いて袖にすがり、「およしなさい。変な男がついているようです。」
「かまうものか。おごってやるんだ。」
「先生。およしなさい。」と村岡は力のかぎり抱き留めながら、通り過る円タクを呼留めた。この騒ぎに気がつかずにいたが、風に交っていつの間にやら霧雨が降り出していたと見え、村岡は車に乗ってから窓の硝子の濡れているのに心づいた。