Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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わがまち

わが町

織田 作之助

Leggi わが町 (わがまち) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 25.869 caratteri · 52 schermate

Aozora Bunko

そして、君枝のお産が済む頃には、すっかり元のからだになっていた。生れた子は男の子で、勉吉と名をつけると、

「なんや、ベンゲットのベン吉か。」

と、他吉は上機嫌だった。

鶴富組の△△沖沈没船引揚げ作業はまだ了っていなかった。次郎が現場へ電報うつと、スグコイマツテイルとの返事だったので、喜んで行こうとすると、君枝は、

「私も一しょに行くわ。ポンプ押しに。」

と、言った。普通、潜水夫が潜っている間、上から空気を送るのは、たいてい肉親の者だった。次郎は若い君枝にはこれまでそれを言い出せなかったのだ。

「ほな、行ってくれるか。」

次郎が大袈裟に君枝の手を握ると、君枝は照れて、

「なんやこう、あんたに離れるのがいやで言うたみたいやけど、私いままで毎日お祖父ちゃんの俥のタイヤに空気入れてたさかい、ポンプ押すのん上手やし。」

と、言った。

鶴富組の主人は腕利きの潜水夫が無くて困っていたところだった。次郎は、

「人間はたまに怪我もして見んならんもんですよ。」

と、笑って、三十三尋の深海へ潜った。空気を送っているのが赤ん坊を背負った君枝だと思えば、次郎はもうどんな危険もいとわぬ気がして、そして、マニラで死んだという君枝の父親の気持が、ふっと波のように潜水服に当って来るようだった。