Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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キャラコさん

キャラコさん

久生 十蘭

Leggi キャラコさん di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 21.236 caratteri · 43 schermate

Aozora Bunko

なんでもなくしてくださったあなたの親切が、私にどんなたいへんな影響をあたえたか、いつか必ずわかるときが来るって。……つまり、これが、その結果です」

キャラコさんは、発動機艇の桟橋まで佐伯氏を送って行った。

発動機艇は渚を離れた。

佐伯氏は船尾に坐って、ゆるゆると木笛を吹いている。

岸では、キャラコさんが長い蘆を振ってわかれの挨拶をする。

発動機艇の影が見えなくなっても、木笛の音はまだきこえていた。

次の日のひるごろ、キャラコさんと茜さんは、長尾峠の頂上に立っていた。眼のしたに、蘆の湖が、古鏡のように、にぶく光っている。

キャラコさんは、ここから御殿場のほうへくだり、茜さんは、仙石原のほうへおりて、それから東京へ職業をさがしに行くのである。

いよいよ別れる時がくると、茜さんが、いった。

「兄は、ほんとうにあなたを愛していたのではないでしょうか。あなたが立上氏を呼んだと聞くとその夜、兄は夜半にそっと起きあがって、稀塩酸でじぶんの眼をつぶそうとしているのです。必死なようすでしたわ。……あなたにだけは嘘つきだと思われたくなかったのでしょう。……これだけ申しあげたら、この間、あたしがなぜあんなひどいことをいったか、わかってくださるでしょう。