Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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キャラコさん

キャラコさん

久生 十蘭

Leggi キャラコさん di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 21.236 caratteri · 43 schermate

Aozora Bunko

キャラコさんは、思わずためいきをついた。

「たいへんだわ、死ぬまで、金をつかうことに、あくせくしなければならないとすると……」

金をもつことは、不幸のはじまりだということの意味がわかるような気がする。じじつ、あんな遺産などをもらわなければ、こんなところで肩身を狭くしていることもいらないし、世間へ金の使いみちを探しに出かけることもいらない。そう思うと、キャラコさんは、なんだか山本氏がうらめしくなってきた。

キャラコさんは、いつまでたってもうごかない浮木をながめながら、ぼんやりと考えしずんでいたが、ちいさなためいきをつくと、蘆を一本折り取って、それを鞭のように振りながら、湖尻の疏水のほうへ歩き出した。……今日こそ佐伯氏に例の話を切りだしてみようと思いながら。

二

佐伯氏は南京の戦争で失明した名誉ある傷痍軍人である。

傷痍軍人といっても、衛戍病院にいるのではないから、あの白い病衣を着ているわけではない。背に帯のついたスマートな大外套を着て、アッシュのステッキをついて歩いている。

顎はいつもきれいに剃ってあるし、髪にはキチンと櫛目がはいっている。