Classici giapponesi con furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Leggi キャラコさん di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.444 caratteri · 30 schermate
「あなたのような同情屋さんに、そんなこと、できるかしら」
なるほど、それにちがいない。あんなにも緋娑子さんを愛していた悦二郎氏の手から、大切な思い出の一束をもぎ取ってくる自信はなかった。キャラコさんは、正直に自白した。
「できそうもないわ。……でも、盗みだすなんてことは……」
緋娑子さんは、グイと頭をうしろに引いて、威しつけるような声で、いった。
「四の五のいう必要はないでしょう。あなたの近親のために、むかしの友達が迷惑をしているとしたら、それくらいのことをやってくださるのが当然よ。……手紙はね、書斎の書机の向って右の上から二番目の抽斗の中に空色のリボンでくくって入っています。鍵はかかっていませんわ。……ねえ、やってくださるでしょう、キャラコさん。さもないと、あたし終生あなたを軽蔑してよ」
キャラコさんは、すこし腹が立ってきた。こういう無意味な強制に屈服することはないのだが、相手をしているのがめんどうくさくなって、はっきりとうなずいた。
「やって見ますわ」
そして、心の中で、こんなふうに、つぶやいた。
(悦二郎氏にしたって、こんなくだらないひとの手紙なんか大切にとっとくことはないわ!)