Classici giapponesi con furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Leggi キャラコさん di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 32.972 caratteri · 66 schermate
……渚に引き上げられた破船の船尾や潮で錆びた赤い浮標の上を、たくさんの鴎が淋しそうに飛び廻っています。……鴎にも故郷がない。……海も故郷ではない、陸も故郷ではない。……空の下をあてもなく飛び廻っているばかり……。あたしたちも、この鴎と同じようなものだと思って、なつかしくてたまらなかったの。……この鴎たちも、せつない郷愁を運んで行くところがないのだと思って、ながめているうちに悲しくなって、いつも、泣き出してしまうの……」
これが、レエヌさんのこころの秘密だった。自棄も、反抗も、無信仰も、みな、このやるせない絶望の中で熟成した不幸な気質なのだった。レエヌさんの意地悪も、強がりも、孤立も、奇矯なさまざまな振舞いも、今こそ、そのいちいちの意味がはっきりとわかるのである。
キャラコさんの、心はしみじみとうなだれる。この気の毒なレエヌさんをにらみつけて、立ちはだかっていた、自分のすさまじいようすを恥辱と慙愧の感情で思いかえす。
キャラコさんは、手も足も出ないような心の無力を感じながら、低く、つぶやいた。
「……あやまらなければならないのは、あたしのほうよ、レエヌさん……」