Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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スウィスにっき

スウィス日記

辻村 伊助

Leggi スウィス日記 (スウィスにっき) di 辻村 伊助 (つじむらいすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 216.275 caratteri · 410 schermate

Aozora Bunko

墺太利へ

汽車には見事のり遅れて、次の五時二十五分は普通列車と来ている、それでも湖水のふちを走るとき、遠くからは神妙に静まりかえって見えるツューリッヒの、高塔の浮く水の上に、あすこに一とかたまりここに一とむれと、ちらちら散った鴎の群れは、矢張り何となくなつかしい。日はユトリベルクの上に沈んで、向う岸にうねうね並ぶ丘の上には、ほんのりと紅みを帯びた夕雲が、折り重なって湖水の水をのぞき込む。水はやや風立ったのか、小波がしびれを打って、丘もポプラも村の白壁も、そしてそのすべての上に押し重なるあの雲の影も、一様に融けて、ただ一と色の淡い紅色が、湖水のまん中を西北から東へかけて、帯のように流れてゆく。ツィーゲルブリュッケで、すり違いの急行を待つ間に、日はとっぷりと暮れて、やがて近づいたウェーゼンの高原は、夕闇の奥にグレルニッシュの雪が今宵も蒼く光って、しーんとしたホテルの丘には、ポプラの風にクラリヨンが響いて来た。

墺太利へ

四月二十一日も引きつづいて、天気は非常にいい。いくら眺めても見飽きのしないウェーゼンの春景色も、ヴェランダの朝飯を最後として、今日は別れてしまわねばならない。