Classici giapponesi con furigana
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ズラかったしんきち
ズラかった信吉
宮本 百合子
Leggi ズラかった信吉 (ズラかったしんきち) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 54.656 caratteri · 110 schermate
年とった方が奇麗に剃った顎をあげて、上気せた穢い顔をしている信吉の方を見た。
「――朝鮮人だよ!」
「へえ……」
そのまんま、またブラリブラリ……。
ムラムラっとして信吉は、息が早くなった。どいてくれ! 近くの一人へ体あたりにぶつかった。何だと思ってやがるんだ。どけったら!
「国家保安部はいないのか」
ピーッ。誰かが口笛を鳴らした。信吉の、若々しい生毛のある唇からは血の気が引いている。やけくそに、もう一遍つっかかって行こうとしたとき、
「どしたんだ?」
おお。日本語だ! 新しくもない鳥打をかぶって、縁無眼鏡をかけた男が直ぐ、達者なロシア語で牛乳売の娘に何か云った。それから信吉に、
「君、いくら払ったんだ?」
「五十カペイキだ」
「この女は、一ルーブリ五十カペイキと云ったって云ってるんだ」
二人の問答がはじまると、群集は和いでガヤつきだした。
「この女の足へ、湯ぶっかけて逃げようとしたって、そうか?」
「冗談じゃねえ! そいつがとびつきやがった拍子に、ちっとぱっかこぼれたんです」
縁無眼鏡が、ロシア娘にうまいこと一本参らしたと見えて、群集は機嫌よくドッと笑った。さすがにテレて娘は桃色の布の端をひっぱりながら、外方を向いてる。