Classici giapponesi con furigana
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ズラかったしんきち
ズラかった信吉
宮本 百合子
Leggi ズラかった信吉 (ズラかったしんきち) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 54.656 caratteri · 110 schermate
へえ……ソヴェトの人民裁判所ってのは、こういうもんなのか。
第一、裁判所と云ったって、普通の家と同じ建物だ。ただ玄関の上のところに一つ横看板がついている。それにソヴェトの国標、槌と鎌とのブッ違えを麦束で囲んだ標とソコリニチェスキー区第二人民裁判所という字が書いてある。
入った直ぐのところに、巡査がタッタ一人ブラブラ後手をくんで歩いていただけだ。
濡れた靴と襟を立てたレインコートのまんまで入って来る男連は、穢れた廊下の左右にいくつもある室のどれかへさっさと姿を消す。
信吉が、巡査に紙を見せて教えられた一つの室では、ちょうど休憩だ。
開けっぱなしたドアのまわりで多勢が喋りながら煙草をのんでる。室内の幾側にも並んだベンチ半数ばかりに男女がかけて、或る者は前と後とで頻りに話ししている。
信吉自身、今日はもう心配していない。宿の親爺グリーゼルが女から訴えられた。その証人に立てばいいんだそうだ。
けれど、こう見まわしたところ、みんな実にゆったりとしている。
尤も、ソヴェトの人民裁判所というのは、人殺しや放火犯は扱わない。つまり刑事裁判所ではない。民事裁判所なんだ。