Classici giapponesi con furigana
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ドーヴィルものがたり
ドーヴィル物語
岡本 かの子
Leggi ドーヴィル物語 (ドーヴィルものがたり) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 21.723 caratteri · 44 schermate
そしてまあ、私のやれる迄はやったのですけど第一番に賭博場の探偵長ボリス・ナーデルの眼についたらしいのよ。
――ふうむ。それで君、何うしても今夜スペインへ送還されるの。
――ええ、どうしてもよ。そして帰った処で今も云った様に政変は明日起るかも知れないスペインなんです。私はあなたにいま一生の最後のさよならを云って置くのが利口だと思うのよ。
彼女はしげしげ小田島の顔を見乍ら手を差し出した。彼もその手を握り返したが、力は無かった。
――仕方が無いなあ、それが君の運命なら。
イベットは顔の緊張を解いてベンチから立ち上った。そして乗馬服の胴を撫で、スカートを軽く二つ三つ叩くと俯向き加減に歩き出した。が、ベンチから未だ腰を揚げ得ないで思案に暮れて居る小田島を再び振り返ったイベットは、もういつもの快活なイベットの張のある顔に返って居た。そしてその顔へ少しの媚さえ湛えて小田島の側へ戻り肩越しに彼の顔を覗き込んだ。
――ムッシュウ・小田島! あなた私に、何か欲しいものは無い?
彼はだしぬけに云われて狼狽えた。
――ほ、ほ、ほ、ほ、判らない? ムッシュウ・小田島。
小田島は手足まで赫くした。