Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひとつぼかん

一坪館

海野 十三

Leggi 一坪館 (ひとつぼかん) di 海野 十三 (うんのじゅうざ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 27.902 caratteri · 56 schermate

Aozora Bunko

「ありがとうございました」

源一はうれしくて大きな声でお礼をいうと、再び車にうちのって走りだした。しかし、行けども行けども、あいかわらずのひどい焼跡つづきで、だんだん心細くなって来た。

こんな時に花をさがしに走っている自分が、世界一のまぬけな人間のように思われて来るのだった。

れんげ草

「三軒茶屋は、まだでしょうか」

源一は、とちゅうでオート三輪車をとどめて、道ばたにぐったりなって休んでいる大人に声をかけた。

「三軒茶屋だって、三軒茶屋はもう通りすぎたよ。ここは中里だよ」

「へえッ通りすぎましたか」源一のおぼえている三軒茶屋は、大きな建物のならんだにぎやかな町だったが、それも焼けてしまって、ぺちゃんこの灰の原っぱになったため、通りすぎたのに気がつかなかったらしい。「多摩川へ行くのは、こっちですかね」

「多摩川だね、多摩川なら、これをずんずん行けば一本道で二子の大橋へ出るよ」

「ありがとう」

「買出し行くんかね、あっちは高いことをいって、なかなか売ってくれないよ」

「そうですか、困りますね」

電車の姿のない電車道の上を源一は車をすっとばして行った。やっぱり焼けているけれど、ぽつんぽつんと所々に焼跡があるだけで大部分の町が残っていた。