Classici giapponesi con furigana
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ひとにぎりのかみのけ
一握の髪の毛
田中 貢太郎
Leggi 一握の髪の毛 (ひとにぎりのかみのけ) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6548 caratteri · 14 schermate
章一のすぐ後を歩いていた一人の遊人は、章一の倒れた時その脚下から一疋の猫のような小さな獣の飛びだして走ったのを見た。
厭な気もちで郊外から帰って来た山崎夫人は、寝床の中へ入ってもぐっすり睡れないので寝返りばかりしていたが、そのうちに何かしら注意を促すものがあった。欧風の新らしい寝台に寝ていた夫人は、前の椅子に腰をかけている人影を見つけたのであった。
「何人です、何方」
小さな有明の電燈の光にぼかされた椅子の人は顔をあげた。それは章一であった。
「あなたは」
夫人は起きた。夫人は深夜戸締をかってに開けて入って来た闖入者を咎めずにはいられなかった。
「どうして来たのです」
章一はぐったりとしているような容をしていて何も云わなかった。夫人は起きて往った。
「何人に開けてもらったのです」
同時に章一の体は横に倒れて椅子から落ちた。それは両脚を膝の上から切断せられた血みどろの章一の死体であった。
怪しい死体、両脚を省線の踏切に残した怪しい死体が寝室にあったがために、警察に呼ばれ、新聞に書きたてられた山崎夫人は、三日の後に変死した。そして、章一の細君はその日から失踪して今に生死不明である。