Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

いっぽんのはな

一本の花

宮本 百合子

Leggi 一本の花 (いっぽんのはな) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 26.709 caratteri · 55 schermate

Aozora Bunko

「だれの?」

「甥の――わるくないでしょ? この色――」

「いつか往来で会った坊ちゃんですか」

「ああ、お会いになったことがあるのね」

幸子が、それを小耳に挾んで机に向ったまま、

「だれに会ったって?」

と大きな声で云った。

「健ちゃん」

暫く幸子のペンの音と、竹の編棒の触れ合う音ばかりが夜の室内を占めた。そのうるおいある静けさが、彼の心にしみ入ったという風に、大平がうつむいている朝子の髪の辺を見ながら呟いた。

「丁度こんなときもあったんだろうなあ」

朝子が、死んだ夫と暮していた生活の中に、今夜のような家庭的な情景もあったであろうという意味を、朝子は感じた。彼女は淡い悲しみを感じ、黙った。同時に大平の心の内にも、それにつけて自ら思い出される何事もその妻との間にないと、どうして云えよう。そう、朝子は思った。彼女はこれまでも、大平の去った妻については、自分の趣味と遠慮から進んで一言も触れなかった。今も、朝子は黙ったまま、小さいスウエタアの一段を編み終った。片手で、畳に落ちている毛糸玉から、更に糸のゆとりを膝の上へたぐりあげ、向きをかえて編みつづけようと、朝子が椅子の上で、少し胸を伸ばした。