Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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いっぽんのはな

一本の花

宮本 百合子

Leggi 一本の花 (いっぽんのはな) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 26.709 caratteri · 55 schermate

Aozora Bunko

後者に属する人は、強烈な消耗と同時に新生の可能の故に、自分を包括する。更にひろい人間は、群を忘れることが出来ない。例え、それに対して自分は無力であろうとも忘れることは出来ない。

朝子は、考え考え珈琲を含んだが、不図、一杯の珈琲をも、自分達は事実に於て夥しい足音と共に飲んでいるのだと感じ、背筋を走る一種の感に打たれた。

朝子は、やがてぶっきら棒のように、富貴子に訊いた。

「いつか――あなたとだった? 底知れぬ深さ、っていう詩読んだの」

「さあ、……そうかしら」

彼女等のいるボックスを、色彩ではたくようにして入って来た若い一団に気をとられ、富貴子はうっかり答えたが、

「おや、もうあんな時間?」

自分の手頸と、花模様の壁にかかっている時計とを見較べ、富貴子は、

「大変、大変」

と、油絵で薔薇を描いた帯の前をたたいて立ち上った。

朝子もタクシーで、十一時過ぎ家へ着いた。

十

『明るい時』と云うベルハアランの小さい詩集がある。その中に、底知れぬ深さ、その他朝子の愛する小曲が数多あった。

帰ってから、それを読み始め、朝子が眠りについたのは二時近くであった。