Classici giapponesi con furigana
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ひとあしおさきに
一足お先に
夢野 久作
Leggi 一足お先に (ひとあしおさきに) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 40.200 caratteri · 79 schermate
そうして、なおも、相手を罵倒すべく、カッと眼を剥き出したが……そのままパチパチと瞬きをして、唾液をグッと呑み込んだ。呆れ返ったように自分の眼の前を見た。
いつの間に取り上げたものか、私の松葉杖の片ッ方が、副院長のクシャクシャになった髪毛の上に振り翳されている。二股になった撞木の方が上になって、両手で握り締められたままワナワナと震えている。……その下に、全く形相の変った相手の顔があった。……放神したようにダラリと開いた唇、真赤に血走ったまま剥き出された両眼、放散した瞳孔、片跛に釣り上った眉。額の中央にうねうねと這い出した青すじ……悪魔の表情……外道の仮面……。
その上に振り上げられた松葉杖のわななきが、次第次第に細かい戦慄にかわって行った。今にも私の頭の上に打ち下されそうに、みるみる緊張した静止に近づいて行くのを私は見た。
私はその杖の頭を見上げながら、寝床の上をジリジリと後しざって行った。片手をうしろに支えて、片手を松葉杖の方向にさし上げながら、大きな声を出しかけた。
「助けて下さア――イ」
……と……。けれどもその声は不思議にも、まだ声にならないうちに、大きな、マン丸い固りになって、咽喉の奥の方に閊えてしまった。