Classici giapponesi con furigana
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ひとあしおさきに
一足お先に
夢野 久作
Leggi 一足お先に (ひとあしおさきに) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 40.200 caratteri · 79 schermate
……何秒か……何世紀かわからぬ無限の時空が、一パイに見開いている私の眼の前を流れて行った。
………………………………………………。
「……お兄さま……お兄様、お兄様……オニイサマってばよ……お起きなさいってばよ……」
………………………………………………。
……私はガバと跳ね起きた。……そこいらを見まわしたが、ただ無暗に眩しくて、ボ――ッと霞んでいるばかりで何も見えない。その眼のふちを何遍も何遍も拳固でコスリまわしたが、擦ればこする程ボ――ッとなって行った。
その肩をうしろから優しい女の手がゆすぶった。
「お兄様ってば……あたしですよ。美代子ですよ。ホホホホホ。モウ九時過ぎですよ。……シッカリなさいったら。ホホホホホホ」
「……………」
「お兄様は昨夜の出来ごと御存じなの……」
「……………」
「……まあ呆れた。何て寝呆助でしょう。モウ号外まで出ているのに……オンナジ処に居ながら御存じないなんて……」
「……………」
「……あのねお兄様。あのお向いの特等室で、歌原男爵の奥さんが殺されなすったのよ。胸のまん中を鋭い刃物で突き刺されてね。その胸の周囲に宝石やお金が撒き散らしてあったんですって……おまけに傍に寝ていた女の人達はみんな麻酔をかけられていたので、誰も犯人の顔を見たものが居ないんですってさ」